【 同窓生紹介 】

東京オリンピック出場を決めた武藤 弘樹さん! その原点は? 

 

「 アーチェリー 」

それは弓を引き、的を狙い、弦を放し、的に当てるスポーツである。そして年齢や性別を問わず、誰でも気軽に楽しむことができるスポーツでもある。(全日本アーチェリー連盟より)

 

いきなりだが”東海らしさ”とは何だろう?

最近メディアでは”医学部に強い進学校”という紹介も多い。

私が在学していた30年前(昔っ!)はあまりそのイメージはなかった。変わったものだ。

 

しかし今回武藤さんにインタビューさせてもらって、やはり変わっていないものもあると思った。

 

それは…

 


弓を引く:アーチェリーと出会う

皆さんは中学の部活をどう選んだか覚えているだろうか?

小学生から続けていたスポーツをそのまま選ぶ人もいるだろうし、それまで全く縁のなかった競技や文化活動を選ぶ人もいるだろう。

武藤さんは後者だ。友人に誘われてアーチェリー部を見学にいった。

それが後に彼の運命を大きく左右することになるとも知らず...。

 

アーチェリー未経験の武藤さんだったが、センスがあったのか、中学から早速その頭角を現し始め、中学3年生の時には全国大会で入賞を果たした。

 

 

的を狙う:インターハイから日本代表へ

高校でも全国レベルでの快進撃は続く。

東海高校のアーチェリー部は、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)に何度も出場する愛知の強豪校の一つである。武藤さんもインターハイでは、高1で個人5位、高3で団体4位入賞の成績を収めている。

 

また国際大会では世界ユース選手権(2015年)に出場し銅メダルを獲得した。その結果、高校生ながら日本代表!にも選出される。
2016年にはリオ五輪の国内最終選考会まで残るが、惜しくも出場には至らなかった。


 

ちなみにアーチェリー部では伝統的に先輩がコーチの役割を果たして後輩に教えている。

武藤さんも卒業後、帰省のたびに学校に顔を出しては当時のジャージに身を包み、後輩にその技術を伝えている。

もちろん顧問の先生も付いている。先生はアーチェリーの経験はなかったが、アーチェリーを理論的・科学的に分析し、それを生徒に教えているそうだ。

今回、武藤さんがオリンピック出場を決めたことは、先生やOBを含めた部員の皆さんがとても喜んだことであろう。

 

 

弦を放つ:オリンピックを目指す

大学は慶應義塾大学に進む。

だが当初は必ずしも順調だった訳ではない。環境が変わったことで中々それに対応できず、結果が出ない日が続いたという。

しかしそこで気持ちを切り替え、それまでの自己流から基本に立ち返った練習をすることによって、次のステップに進むことになる。大学2年の時に臨んだ全日本学生アーチェリー室内個人選手権で優勝したのだ。

 

そして2018年、転機が訪れる。

日本代表のAチームに入り、ジャカルタで行われた第18回アジア競技大会に出場した。結果は奮わなかったものの、大きな国際大会に出場したことや選手村での雰囲気や刺激をキッカケに、オリンピック出場を真剣に意識するようになった。

 

もちろん大学では勉強もちゃんとしていた。

卒論のテーマは「日本のアーチェリー人気上昇への施策 ~日韓比較を通じて~」である。

 


的に当てる:狙うのはもちろんメダル

2020年4月、大学を卒業した武藤さんはトヨタ自動車に入社する。

企業側からの誘いではなく、自分から面接を受けてのことだ。トヨタ自動車を受けたのは「車離れが進む若者を何とかしたい」という思いがあったからだ。

とは言え、実際にはオリンピック終了まではアーチェリーに専念する生活を送っている。

トヨタ自動車には本格的なアーチェリー部がないこともあり、現在の普段の練習の場は東京・西が丘のナショナルトレーニングセンターである。

 

2020年はコロナ禍により、オリンピックはもちろん他の多くの競技会が中止となったが、2021年2月の全日本室内選手権では優勝!

そしてその勢いのまま、3月に行われた東京五輪代表選考会では3位となり、ついに代表に内定したのだ!

本大会で目指すのはもちろんメダルだ。 


 

 

ところで武藤さんは愛知県あま市の出身である。

オリンピック出場を決めた翌日、あま市役所には誇らしげにお祝いの垂れ幕が掲げられていた!


 

 

このように東海生には珍しく?スポーツ界の上位で活躍する武藤さんであるが、これは本人の才能もあるのだろうが、もちろんそれだけではない。

多くのトップアスリートがそうであるように、武藤さんも負けず嫌いの性格で、中学時代から朝から夜まで練習に明け暮れていた。

昨年のコロナ禍では練習場が閉鎖されたが、実家に戻り、一部屋を練習場に改造してトレーニングを続けていた。

言うまでもないことだが、そうした本人の取り組みがこの結果につながっているのだ。

 

 

だれでも気軽に楽しむ:オリンピックの後は?

オリンピックがどうなるのか現時点(2021年4月)では分からないが、武藤さんはその後もアーチェリーを続ける意向である。

何しろまだ23歳(オリンピックの時点では24歳)の若者だ。アーチェリーは30代でもトップを目指せる競技でもある。

 

しかし彼には同時にもう一つ目指すものがある。

それはアーチェリーを子供たちに広める活動だ。

実は街中にはアーチェリーを楽しむことのできる施設もあるそうだが、PR不足もあってかほとんど知られていない。そうした環境を改善し、アーチェリーの楽しさを伝え、競技を強くしたいという強い想いがあるのだ。それは前述の卒論のテーマでもあったのだ。(でもその一番の近道は、やはりメダルを獲得することかもね)

OBとして後輩に教える武藤さん


 

 

最後にアーチェリーの魅力についても聞いてみた。

アーチェリーは、微妙な風を読み、それを頭の中で瞬時に計算するという高い集中力が求められるスポーツである。

そして感覚通りに体が動き、結果が出た時には最高の達成感を得ることができるらしい。

オリンピックでは、そんな緊張感やドキドキ感を感じながら観戦してほしいとのこと。

 

 

ところで冒頭で述べた”東海らしさ”であるが、武藤さんにとってそれは「自主性」だという。

周りの環境に左右されることなく、自分が正しい・やりたいと思うことを自分の判断でしてきたことだ。

アーチェリーというマイナーなスポーツを続けてきたことも、それと関係ある。

また東海は”変なヤツ”も多い。(笑)

人間性がありながらも、突拍子もない、あるいは尖った考え方をする人が少なくないことも刺激になっているという。

このことはおそらく、多くのOBが感じていることであろう。

 

〈 あとがき 〉

最近はオリンピック開催に対する否定なコメントや報道があふれている。

まあそれは正論でありやむを得ないことであるが、選手や関係者はこのような状況でも真剣に取り組んでいる方々が多いので、もう少し言い方や伝え方に配慮があっても良いかなと個人的には思う。

ということでオリンピックが開催されたら、是非素直に武藤さんを応援してほしい!

 【 プロフィール 】 

武藤 弘樹(高68回卒)/ トヨタ自動車

2010年 東海中学校入学後、アーチェリーを始める

2012年 全日本キャデット選手権大会 7位入賞

2013年 東海高等学校 入学

2014年 南京ユースオリンピック ベスト8(日本記録更新)

2015年 世界ユース選手権 銅メダル獲得

2016年 慶應義塾大学 入学

2018年 ワールドカップ第1戦、第2戦 銀メダル獲得

2019年 第50回世界選手権大会出場

2021年 全日本室内選手権 優勝

2021年 東京五輪代表選考会 3位 / オリンピックでメダルを狙う!

 

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トヨタ自動車 トップアスリート 武藤弘樹

文責 河尻浩司(高42回)